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〈はじめに〉速聴®は、なぜ「頭の回転を速くさせる」のか

「逆聴」時の前頭葉の活性化は、「計算」「音読」をもしのぐ

一九九三年に『聴覚刺激で頭の回転が驚くほど速くなる』を出版したとき、読者の方々から「速聴がどのようなものなのか体験してみたい」という要望が数多くあったため、速聴カセットテープ付きの『続・聴覚刺激で頭の回転が驚くほど速くなる』を一九九七年に出版した。
日本初の速聴カセット付き書籍ということもあり、発売当初より大好評となり、今までに二〇万部の売上げとなった。
その後、送られてきた読者アンケートに「CD付きはないのか」といった声も多く聞かれるようになったため、内容の充実とCDを付けた『決定版 聴覚刺激で頭の回転が驚くほど速くなる』を一九九九年に出版した。こちらは二五万部近い売上げとなり、この手の本としては、大ベストセラーに値する売れ行きとなった。


こうした数字をみるだけでも、当社の「速聴」が広く一般に受け入れられていることの裏付けとなるわけだが、後述するように、東北大学などで行われた実験で、前頭葉が特異的に活性化することがまとめられ、国際学会で発表されるなど、科学的にも「速聴」が注目を集めている。
さらに、諏訪東京理科大学の篠原菊紀助教授の研究によると、とりわけ「逆聴」時(聴覚と視覚の同時刺激)に前頭葉が活性化されることが報告されている。今後、さらなる研究がなされるが、「計算」や「音読」をもしのぐ活性化といえそうだ。これは冒頭のカラーページにまとめたとおりだ。


このように、「速聴」によって大脳を活性化させることが、科学的にも、一般的にも広く受け入れられたが、私は、それゆえ「速聴」に対する理解を正しくしてほしいと考え、今回改めて本書を刊行することにした。

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国際学会で、速聴®により前頭葉が活性化することが発表された

ハンガリーの首都ブタペストで二〇〇四年六月一三日から一七日まで国際学会「The 10th Annual Meeting of the Organization of Human Brain Mapping」が開催された。人間の脳の形態、機能局在の研究を対象とした最大の学会で、毎年一回開催され、世界中の大学や研究機関から数千人の研究者が出席している。


この権威ある国際学会で、「速聴」によって前頭葉が活性化されることが発表されたのだ。
これは当社、久保田競氏(京都大学名誉教授)、東北大学(川島隆太教授)、日本大学(泰羅雅登教授)の共同で行われた研究によるものである。ここで簡単に研究の内容を紹介しておこう。


「速聴」の未経験の被験者二五名(男性二〇名、女性五名、平均年齢二〇・一歳)に対して、正文と誤文を交えた文理解課題を一倍、一・五倍、二倍、二・五倍の速さで聴かせ、正文と誤文を判断するために課題を聴き取ろうと集中している状態で、脳の働きがどの程度活性化されるかを、fMRI(磁気共鳴映像診断装置)を用いて測定する。
その結果、被験者の脳内の言語領域が、通常の速度の音声を聴いているときに比べ、「速聴」時は、より活性化しているという結論に達したのである。


この測定をもとに今回の国際学会で発表され、「聴く速度との相関が見られたという点で興味深い結果である」「聴くスピードが速くなることにより、どのような処理、または負荷が高まるのかが具体的で面白いのではないか」など、意見が相次いだ。
確かに世界的に見ても、「聴くスピード」にかかわる脳の機能領域についての報告はない。高い注目を浴びることになるのも、もっともだといえるだろう。今後のさらなる研究も期待できる。

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記憶力の強化は、頭の回転を速くさせるが・・・・・・

ではなぜ、前頭葉の活性化が重要なのか。前頭葉は、思考・創造・判断などの働きをする部分で、これらの働きが速い人は、しばしば「頭の回転が速い人」と称される。つまり、「速聴」によって前頭葉を活性化させるということは、すなわち、「頭の回転を速くさせる」ことになると考えられるからだ。


「頭の回転が速い」ということは、いうまでもなく、他の人々よりも「秀でている」ことを意味する。他の言葉でいえば、「頭がよい」「頭がキレる」「知能指数が高い」ということだ。
「知能指数」は、生まれつき高い人もいるが、訓練次第で上昇させることもできる。
その訓練とは、わが国の学校教育の要となっている(そして批判の的にもなっている)記憶力のよさによるランクづけに見てとれる。つまり暗記の繰り返しがそれだ。


しかし、「記憶力のよさ」と「頭のよさ」は、しばしば一致する。だから、一流大学に入った人たちの多くは、それ以外の人たちと比較すれば、社会に出てから、あらゆる分野で成果を上げている。
では、なぜ「記憶力のよさ」と「頭のよさ」は、一致するのだろうか。


第一にそれは、彼らの脳に、学生時代に学んださまざまな情報(社会・人文・自然科学)が正確に入力されているからだ。
ごく単純化して話すと、これらの情報は潜在意識に収められ、熟成され、頭の中でさまざまに結合する。社会経験というものを土台として、自然科学の知識同士が結びついたり、人文科学の知識と社会科学の知識が結びついたりして、そこから、優れたアイディアが生み出されるのである。
もっとも、このような仕組みは、飛躍的アイディア、つまり驚くべき発明のようなものは生み出さない。
しかし、優れた改良ならお手のものだ。つまり、すでに発明されたものに○×をつける脳力には長けているのである。


少し単純化し過ぎたが、要はそういうことだ。飛躍的なアイディアというのは、「バカな質問を次々と問いかけるような人々」を大切に扱う教育環境でなければ生み出されない。この場合、実は本当のバカだったという例も出てくるだろうが、それ以上に本当の天才が数多く発掘されるものなのである。


第二に、記憶力に頼る学習方法は、大脳の記憶中枢(領域といってもよい)を活性化させる。こうして、大脳のある部分が活性化されると、それは他の部分にも影響を及ぼすに至る。これを汎化作用〔波及効果、高度な創発性(ロイド・モーガン博士)、あるいはコットン・キャンディー効果ともいう〕と呼ぶ。こうして、記憶力の強化は、「頭のよさ」につながるのだ。


一方、発明力とでもいうものを開発するのなら、創造力に頼る学習方法で創造中枢を活性化させ、汎化作用を起こせばよい。
しかし、創造中枢が活性化している人々は、普通(主に子供のころは)劣等生と評価されることが多い。教科書はそっちのけで、蟻の動きを一日中ながめていたりする。
そしてそのまま一生を終える人もいるが、そういう人は他人から通常、変人・奇人などと呼ばれる。なぜそうなってしまったかといえば、創造中枢が活性化しているところまではよいが、それがある閾値に達し、相転移して汎化作用が生じるまでには至らなかったからである。
たとえていえば、氷点に達したが水から氷にならず、アイススケートができるまでには至らなかった、ということだ。
谷崎潤一郎といえば、後世にも名が残るであろう大文豪だが、彼の脳に汎化作用が生じなかったとしたら、彼は単なる変態ジジイにすぎない。


このように脳に汎化作用を生じさせるためには、やはり後述する大脳の特定部分を刺激してやる必要がある。
むろん谷崎の場合はそのような方法をとらなかったが、何らかの類似の努力をしていたはずだ。だが今では、特に努力をしなくても、この汎化作用を生じさせる方法が完成されているのである。


ところで、社会人になってから心を入れ替えて、学生時代にあまり勉強しなかった分を取り戻して記憶に努め、「頭の回転を速くしよう」とするには、非常に大きな困難を伴う。
かといって、「私の頭の回転は速くなる」と深層自己説得(自己暗示)したところで、まったく何の効き目もない。他人からそのような催眠(他者催眠)をかけられても同じことだ。

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「ウェルニッケ中枢」は頭の回転を速くするゴールデン・スポットだ!

大脳生理学では、大脳にある「ウェルニッケ中枢」を含む言語処理領域を刺激すると、実際に「頭の回転が速くなる」ことがわかっている。


これは、漢方でいうツボのようなものである。それが脳にもあったわけだ。
このツボは、「ウェルニッケ中枢」〔実際にはもっと複雑なシステムになっており、「ウェルニッケ中枢」(感覚性言語中枢)ばかりでなく、「ブローカ中枢」(運動性言語中枢)や、小脳も特定の役割を担っており、両中枢間の脳神経細胞も重要な役割を果たしている。しかし、ここではわかりやすくこの名称一本に絞った〕といって、「頭の回転を速くさせる」という素晴らしい機能を持つ。しかも鍼を用いる必要もない。
実際、鍼を用いると効果があるのかもしれないが、そうなるともうこれは、脳外科の手術に近い。


ではそれ以外に、どうしたら大脳の特定部分を刺激できるといえるのだろう。とにかく脳は頭蓋骨に覆われているのだ。
まず初めに、このことを解き明かす必要がある。


「ウェルニッケ中枢」というのは、聞いたり読んだりしたものを「追唱」し、ブローカ中枢へと送る大脳の一部分である。
「追唱」というのは、あなたも意識するとそれと自覚できる「ウェルニッケ中枢」の働きによるものだ。
あなたは今、この文章を読んでいる。いかがだろう? あなたは頭の中でここに書かれていることを、目で追いつつ、さらに頭の中で唱えてはいないだろうか? 
たとえば「ウェルニッケ中枢」と書いてあると、あなたの頭の中ではもう一度「ウェルニッケ中枢」と言っているはずだ。これが「追唱」なのである。
そして、この「追唱」の上限スピードこそ、あなたの「頭の回転の速さ」そのものなのだ。


簡単な方法で、それは確認できる。
それは、あなたが音声や文章を理解するとき、その理解のスピードは、あなたの「ウェルニッケ中枢」の音声処理のスピード、つまり上限追唱速度以上には、決してならないということだ。あなた固有の上限追唱速度(むろん、やさしい読み物は速く読めるだろうが、それでも上限を超すことはない)こそ、あなたの頭の回転速度とイコールなのである。
何度か読んだ文章であれば、この「追唱」に要するエネルギーは少なくて済むから、意識でとらえることができなくなる。しかし、「追唱」をしていることに変わりはない。

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「ウェルニッケ中枢」を刺激しよう!

では、「ウェルニッケ中枢」を刺激する、とはどういうことだろう。
その方法は、ただ単に高速音声を聴くだけでよいのだ。なぜなら、すべての音声や目から入った言葉は、必ずこのツボ、すなわち「ウェルニッケ中枢」を通過するからである。頭蓋骨に穴を開けるまでもなく、もともと開いていて、その穴が直接、脳に通じているところ、それは目と耳である。


普段聞き慣れた言葉は、速いものでも野球や競馬などの解説の際のアナウンサーの言葉程度だ。これは普通の二倍から二・二倍の速さである。
魚とか食用肉の競り(オークション)では、約二・七倍の速さで言葉が飛び交うが、これは普通の人には何を言っているのか、わからない。ただ、競り合う人たちにとっては、いくつかの言葉のパターンがあるだけだから、慣れれば、聴き取れる。


しかし、普通に話すスピードを三倍、四倍も速くしたら、どうなるだろう。人間の口では、この速さは無理だ。しかし、テープレコーダなら可能かもしれない。
ところが、ご存じのように、そんなに早く回転させようとしたら、キュルキュルという音が聴こえるだけである。このキュルキュルさえなければ、脳力開発にとって、新しい分野が開けるのだ。
とはいえ、一気に四倍速に挑戦してもおそらく聴き取れないだろう。「ウェルニッケ中枢」の脳神経細胞同士の結びつき(ネットワーク)が粗くて、活性化されていないためだ。


そこでトレーニングが必要となる。もっともトレーニングといっても、ただ段階を追って速く聴くだけのことだから、トレーニングというイメージはかなり薄い。
なお、勉学(勉強、試験勉強、資格取得のための勉強など)のためにすでに二倍速程度で二〜三度聴いている音声は、いきなり四倍速にしても聴き取れる。したがって、このような場合、時間短縮効果と全脳活性化という二つの効果が働き、大きな力を発揮する。これは朗報といってよい。


また小・中・高校生や資格試験に挑戦している人は、このトレーニングによって高い点数をとることができる。私たちの行っている「速聴」には特に子供用のものはないが、「速聴」用のソフトウェアの内容はわかりやすくできているので、小学校四〜五年生以上なら十分有効である。
なお、本書では同じような説明が、あえて繰り返し述べられている部分がある。それは「追唱」というアイディアを加工して取り入れたためだ。このことにより、一度読むだけで大方を理解して、時間の無駄をなくすことができる。


そこで「くどい」ことは十分承知で、同一の原型をさまざまな角度から述べてある。同じ事実について、角度を変えながら何度も解説すると、事実の本質が見えてくる。あることを学ぶ際に、最も効率のよい理解法は「繰り返し」にある。
本書は一九九三年一〇月七日の初版第一刷から、この定説を応用した。そして増刷するごとに内容に手を入れた。したがって第一刷や第二〇刷など、また第百刷と、本書とは表現や内容が違う部分が多い。


こうして読者の反響を調べたところ、「一つのことを一読して理解できた」というお便りを多くの方々から頂いた。むろん「くど過ぎる」という内容のものも二割ほどあったが、私のこの試みは一一〇パーセント成功したと思う。必ず新たな発見があるはずなので、くどいからといって途中下車しないことを望む。


話は戻るが、こうして三倍速弱まで理解できるようになったら、その分、あなたの頭の回転は速くなったことを意味する。つまり脳神経細胞同士の結びつき(ネットワーク)の密度が高くなり、「追唱」の脳力がその分、速くなったわけである。


これも簡単な実験で確認できる。あなたが二・五倍速程度まで聴き取れるようになると、本を読むスピードが確実に速くなっていることがわかる。もっとも、本書にあるような方法では、二・五倍速を聴き取るのは初めから誰にでもできる。したがって、誰でも速読は可能なのだ。
しかし、この場合の効果は一時的である。それは「ウェルニッケ中枢」が情報の高速流入によって一時的に活性化されたためにすぎない(より正確にいえば、ウェルニッケ中枢とブローカ中枢、そしてその中枢間を結ぶ脳神経細胞が活性化されたため、ということになる)。


脳力が恒常的に高まるのは、この「速聴」を繰り返して行い、「ウェルニッケ中枢」の脳神経細胞同士のつながり(つまりネットワーク)が密になったときだ。この「速聴」の過程で脳幹網様体も刺激され、汎化作用が生じ、全脳が活性化する。
また前頭連合野なども活性化する。それは人により一週間あるいは一カ月かかることもあるが、「速聴」自体、音声内容の高速理解、あるいはまた時間の節約という本来的効果もあるので、これは生涯学習の一つであるといっても差し支えない。


こうして、あなたの大脳の一部である「ウェルニッケ中枢」は、これまでは真空管だったものが、超高密度LSIに置き換えられたことになる。この差は大きい。どのくらい大きいかということを知っていただくために、別の例をあげると、昔の「人力車」と現代の「スポーツカー」ほどの差がある。
こうして「速聴」で耳から大脳へ入力された高速音声は、すぐに「ウェルニッケ中枢」で高速処理され、大脳の関連各個所にフルスピードで伝達される。


「頭がキレる人間」というのは、まさにこのような脳の構造を持った人に対して与えられる言葉なのである。
しかし、「ウェルニッケ中枢」内のネットワークをより強化すれば、「頭がキレる人間」など、錆びついた包丁にしか見えないだろう。これは決してオーバーな表現ではない。
パソコンを用いているなら、容易に理解できると思うが、パソコンが普及し始めたころは八ビットが主流であり、その処理速度は、イライラするほど遅い。一六ビットになると少しは救われた思いがするが、三二ビットとなると、さすがに速い。
あなたの脳も同じで、処理スピードが速くなると汎化作用が起こり、あなたの脳全体が活性化するわけだ。


二・七〜二・八倍速で脳力は十分に開発される。このスピードで聴き取れない、という人はまずいない。
「もっともいきなりではなく、二倍速から二・五倍速で数回耳を慣らせておくと効率がよい。ひとたび耳が慣れれば、あとはどのようなテープでも二・八倍速あるいは三倍速でいきなり聴いても聴き取れる。そして、ぜひ四倍速まで挑戦していただきたい。ただ四倍速は普通の速度から二・五倍速程度ですでに三度ほど聴取済みのテープを用いる。つまり加速してから聴くという方法だ。これでほぼ一〇〇パーセント聴取できる」などと改訂前の旧著には書いたが、現在では、個人差はあるものの、いきなり三・五倍速で聴き取れるほど改良がなされている。


開発当初はリラックスしながら、しかし一生懸命に聴く程度のことは必要だったが、もはや一生懸命ではなく、ただリラックスして聴くだけで十分になったのである。
また、四倍速は「逆聴」という方法を行うと、前頭葉がより高く活性化することがわかった。これは印刷された文章を見ながら同じ文章を聴くという方法である。前頭葉は、思考・判断・言葉を発するなどの働きをする部分で、人間らしさの中枢と考えられていることは、先に述べた。聴覚と視覚の同時刺激が、この前頭葉の活性化には有効なのだ。


「速聴」の効果についての理論的裏付けは、米国ニューヨーク州のシラキュース大学のほか、多くの大学で実験がなされ、論文もさまざまある。これらは本書の巻末に列記しておいた。
本書が、経営者、ビジネスパースン、セールスパースン、教職者や小・中・高校生を抱えている人たち、また学生自身にとって、さらには資格試験を取ろうとしている人たちにとって、福音となれば(なるはずだが)、筆者としてこれ以上の喜びはない。


二〇〇五年四月
株式会社エス・エス・アイ代表取締役社長
田中孝顕

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